こんにちは、美容ブロガー&ライターの頼 凜々華です。
今日はSNS上でまことしやかにささやかれている
「品薄商法」についてです。
化粧品メーカーにいた人間としては、ちょっと聞き捨てならないこの噂。実際のところどうなの?という声に迫ります。
仕組みからしてありえないんです。というのを解説していきます。
1 「品薄商法」とは?
ここでいう「品薄商法」とは、メーカーが、
「本当は在庫があるのにわざと在庫がない、または少ないと見せかけて、ユーザーの購入をあおること」を言います。
ネットでよく言われているのは、例えば、
「○○(ブランド名)の下地ずっと売り切れなんだけど!これ絶対品薄商法だよね」
「××(メーカー名)はいつも品薄商法ばっかりで買う気失せる」
などの言葉です。
このように、「品薄商法」と言われる状況はなぜ起きるのでしょうか?
以下で説明していきます。
2 そもそも、メーカーは商品を売りたいんです。
化粧品メーカー、すなわち一般的にいう株式会社は、営業活動によって利益を上げ、それを株主に配当という形で還元していく組織体です。
となれば、「買いたい!」というお客さんには「どうぞどうぞ」と商品を売り、少しでも多く売上が上がるほうがいいですよね。
商品が売れないと利益が出ません。
そこで会社が商品の出し惜しみをしていたら、ライバル会社にお客さんが流れてしまうかもしれないし、待っている間にお客さんが飽きて、
もう興味がなくなってしまうかもしれません。
そんな状況を、果たして化粧品メーカーは自ら作り出すでしょうか?答えはもちろん、「NO」ですよね。
買いたいときに買ってもらい、売りたいときに売れる。
適切な在庫が常にあるのが化粧品メーカーにとっては望ましいのです。
3 でも、在庫がなくなってしまうことがある。
上記で、メーカーは、売りたいときに売れる、買いたいときに買ってもらえるよう在庫を構えるのが望ましいということをお伝えしましたが、
これがなかなか難しいのが現実です。
理由としては、以下のようなものがあげられます。
世界の経済活動状況に大きな影響を受けるため
⇒例えば、ネイルカラーは純国産ではなく、バルク(内容物)をフランスで製造し販売しているものが多いのですが、現在(2022年5月)のように戦争が起きている場合など、空や海をまたいだ原料や容器などの調達がうまくいかず、在庫が薄くなってしまう。といったことが挙げられます。
SNS・インフルエンサー文化の台頭で、在庫予測が従来のように堅実にできないため
⇒従来であれば、雑誌5社、TVCM投下4スポット、など、事前に投下する広告量や宣伝規模によってある程度売り上げに予測がつき、それを踏まえて在庫を構えることができました。
しかし近年になりSNSが台頭し、情報発信力の高いインフルエンサーが気まぐれに取り上げただけで翌日あっという間に姿を消す商品も
珍しくない状況になりました。
このような情報発信から購入までのルートを各メーカーがコントロールできない状況が増えたため、一度バズった商品は長期間品切れ、品薄となる場合が増えています。
いわゆる転売屋が世界各地から買い付けにくるため
⇒商品を購入し、フリマサイトなどで高値で転売する、いわゆる「転売屋」。
日本だけでなく様々な国からやってきて、大量に商品を購入し、自国で転売する転売屋が増えているのはコスメカウンターなどでも
よく見かけるため、想像に難くないと思います。
彼らが新商品や限定品などを、手を変え品を変え大量購入していくため、商品がこれまでにない偏った売れ方をみせ、時として欠品してしまうことが増えているのです。
4 多くのメーカーにおいて「品薄商法」は存在しない
このように、様々な原因によって商品が品切れを起こし、売る機会を逃してしまうことは、ほとんどのメーカーにとって頭の痛い問題であり、
自ら望んで作り出す状況とは考え難いものです。
コスメカウンターで「これずっと品切れしてたんですよ~今日やっと入ってきました!」とBAさんがセールストークを謳ったとしても、
その背後には販売機会を損失してしまいがっかりしている本社スタッフがいます(苦笑)
上で述べたような様々な原因を踏まえて、安定した在庫を構えられるようになることが、メーカーの物流・商品企画・セールス担当者の当面の命題だといえます。
いつでも欲しいときに欲しいものを、欲しい人全員にいきわたるよう販売できる。そんな時代はいつ来るのかな、と遠い目をしてしまう私なのでした。